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「薔薇色の恋が私を」「愛が薔薇色に輝けば」「薔薇の誓いと愛を胸に」 コニー・ブロックウェイ [ライムブックス]

長く未読本に山積みしていた作者コニー・ブロックウェイの「薔薇の狩人(ローズ・ハンター・トリロジー)」3部作。
何となく積んでたんですよね。
そして、何となく手を出してみた。
ローズハンターの三人とナッシュ家の三人とのお話。



「薔薇色の恋が私を」

物語全体がフランス革命前後からナポレオン戦争の前半までが舞台となっていて、実はそれと密接に繋がって物語が練られているのが、各章に挿入されている年号などで分かります。
歴史を知っていると、ローズハンター達の立場や状況の理解に役立ちます。
物語の起点になっている、ナッシュ家に三人が現れた1801年、この時三人はフランスで捕らえられて2年間獄中で過ごした直後でした。
彼らの育った修道院はもちろんカトリックですから、彼らの諜報活動は教皇領が消える1798年のローマ共和国建国に端を発している訳です。
でも、そんなこと知らなくてもロマンス小説なので、楽しく読めるんですけどね。

そんな激動の時代、完全なスコットランド人のキットとナッシュ家次女ケイトの話。
いわゆるハイランダーがヒーローだと、何となく泥臭いロマンスになるのは何故なのだろう^^;
たぶん、イングランド側から見たスコットランドのイメージが付いて回るんだろうなあ。
この話、キットがハイランダーそのもののキャラの上、平民庶子、財産地位なしなもんで、更に地味な感じになってます。(大尉なので、普通に考えればかなりの出世だし、地位もあるんだけど)
ヒロインも金なし貧乏未亡人だし、舞台が冬のハイランドだしで、一層、地味に暗い。
全編通して横たわる重苦しさは見事です。タイトルのきらびやかさとは正反対。
でも、始めの印象よりは楽しく読めました。
三部作の一話目なので続く最大の謎があるんですが、それ以外は上手く収まる所に収まっていました。



「愛が薔薇色に輝けば」

美形ヒーローと絶世の美女ヒロインの組み合わせ。美形同士というのは珍しい。
物語は面白かったのですが、ヒロインのヘレナがちょっと微妙だったかな。
どうやら私は絶世の美女というキャラクターが苦手らしい。それに、結局のところ、最後までヘレナが考えが足らないというか、表面的というか、底が浅い感じがした。
マンローは欠点のない美形貴公子系のヒーロー。
庶子というのが欠点なんだけど、両親はスコットランドで結婚してるんだよね。お母さんはスコットランドの元伯爵家の娘だから血筋は良いし、本当に欠点のない設定だ。
イングランドでは英国国教会とカトリックとの結婚が認められないって辺りの法律が良く分からなかったんだけど、18世紀と19世紀で結婚についての法律が変わったのかな?
それとも貴族に関しては、英国国教会同士でないと結婚できない法律があったのかな?
調べてみたが分からなかったわ^^;
まあ、そういった良くある(?)事情から庶子として父方の祖父から見捨てられて修道院に引き取られたマンローは、ある程度の年齢まで上流階級の嫡男として育てられているので、キャラクターがしっかり紳士で、安心して読んでいられます。
今作はリージェンシーらしく華やかさがあって、最終的にヒーローが金落ちの貴族になるし、ヒロインは未婚の処女だし、三作品の中で一番一般受けしやすい内容でした。
ステレオタイプの話なので、面白みや新鮮味はないですが、安定した話の展開になってました
謎は一話同様そのまま続きます。でも、あの人が犯人なんだろうなあというのは前回同様想像ついてるんですが、ミスリード役のキャラがもう一人増えてましたね。あれ、前作から出しておかないと……と思ってしまった。



「薔薇の誓いと愛を胸に」

三作品の中で、この作品が一番好き。
捻くれヒーローが好きなのでロスが良かったし、軽薄を演じながら実は堅実で現実的なシャーロットが良かった。
ヒロインがバカなことをして、ヒーローを危機に陥れるパターンが多い諜報物ですが、この作品はそんなシーンがなく、最後まで一貫して密偵を貫こうとするとても有能なシャーロットが素晴らしい。
一話目の冒頭が、今から考えると彼女の未来を暗示していたんだなあと思いました。
実は後半に入るまでロスの心の内があまり見えなくて、前二作に比べるとメロメロ度が低く感じてたのですが、いえいえ、そんなことございませんとも。
シャーロットの評判を落とす作戦中は話があまり進まなくてじりじりしますが、サン・リヨン伯爵の手紙が届いてからの怒涛の展開は読む手が止まりませんでした。
ロスの葛藤やら嫉妬やら何やらが実においしい。
二人がラブラブしている所に助けに飛び込んでくるキットとマンローのラストも何度読んでも楽しいです*^^*

1806年7月14日……ライン同盟成立直後ですね。更には手紙がプロイセンの大使からローマ法王宛てということで、第四次対仏大同盟も関係してきてるんだろうな。
ナポレオンが行け行けで、まだイギリスが本腰を入れ始めた頃だから、世界情勢がおもしろいことになっています。
更にはロスの過去の関係で、スコットランドに辿り着いた1788年と経緯でピンときます。ブルボン家の出身ってことで、設定が上手いなあと思った所です。
ま、一話と同じで歴史的背景を気にしなくても楽しく読めるんですけども。
元々、ロスだけにローズハンターの任務に意義があったし、その後も彼が修道院長の諜報活動を続けていた理由なんですよね。
シャーロットと同じく二足わらじを履いてたようだし。
アンドレ・アンリ・ルースがロスの本名だよね。
アンドルー・ロスとして諜報活動を行いながら、アンドレ・ルースとして反ナポレオンで活動してたのかなあと、思ったり。でもその辺りのことは詳しく書いてないんだよね。
どういう経緯でナイトの称号を得たのかも気になる所でした。やっぱり第四次対仏大同盟に貢献したからかなあ。
歴史的事実と上手く絡み合った物語で、とっても想像が広がって行く話でした。
ロマンス小説とかの枠とは関係なく、こういう話好きだわ~。

犯人については想像通りで、ローセットに化けてるんだろうなあというのはすぐに分かります。しかし、もう一人の方にはしてやられてしまいました。やられたあ、と唸ってしまいました。小説ならではですね。
犯人との最後の対決の時の飄々としたロスがこれまた素敵です。ピンチなんだけどね。
隠れてる犯人の名前を呼ぶ所とか……ああ、知ってたのかって、やっぱり三人の中で観察眼と分析力はぴか一なんだよね。一番食えないヒーローだしなあと納得。ダントツ私好みでした。

三作品とも面白く読めました。
ナポレオン戦争初期の勉強にもなったし、久々に楽しかった。


薔薇色の恋が私を (ライムブックス)

薔薇色の恋が私を (ライムブックス)

  • 作者: コニー ブロックウェイ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2006/05
  • メディア: 文庫



愛が薔薇色に輝けば (ライムブックス)

愛が薔薇色に輝けば (ライムブックス)

  • 作者: コニー ブロックウェイ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2006/09
  • メディア: 文庫



薔薇の誓いと愛を胸に (ライムブックス)

薔薇の誓いと愛を胸に (ライムブックス)

  • 作者: コニー ブロックウェイ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2007/02
  • メディア: 文庫



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「塔の上で愛を聴かせて」 エロイザ・ジェームズ [ライムブックス]

「塔の上で愛を聴かせて」 エロイザ・ジェームズ

おとぎ話シリーズの4作目です。モチーフは「ラプンツェル」です。
ヒーローはスコットランドのキンロス公爵ガウアン。ヒロインはイングランドのギルクリスト伯爵令嬢のエディス。
ガウアンの一目惚れの物語ですが、結婚生活が話のメインです。
特筆すべきはヒーローが22歳と若い!
そして傲慢ではあっても真面目で誠実な人柄なので、生まれた時から婚約者がいる身の上では他の人と性的な関係を持てなかったらしいヒーローです。その婚約者は一年前に病で亡くなってます。
ということで、久しぶりに読みました。童貞ヒーロー。
親の所為で、主人公達が結婚に対してトラウマを持っている中で、初夜の時点で二人とも初めてということで、後々引きずる問題が起こってしまいます。
これに関しては、どっちもどっちかなあ。若くて童貞なら、ガウアンの方は仕方ないよなあって思っちゃいました。だって、まだ22歳よ?
そしてラスト。雨の中、塔の外壁を4階まで登って行くガウアンに関しては、それも肋骨骨折中、左手首もどうやら骨折中、全身打撲だらけの状態で、確実に人間業じゃないですが、イングランド人だとリアリティないですが、ハイランド人なら有りだとみんな納得してしまえるのだろうか。
ラプンツェルを彷彿とさせるのは終盤のエディスが塔に閉じ籠った部分ですね。それ以外はラプンツェルって感じのストーリー展開ではありませんでした。
同時進行の、ギルクリスト伯爵とその若い妻ライラとの破綻しかけている夫婦生活の物語も良かったです。伯爵の内面が直接描かれていないだけに、想像の余地があって楽しかったです。


読み始めた時は気づかなかったのですが、これ、ラズベリーブックス発行のジュリア・クインの「大嫌いなあなたと恋のワルツを」と、お互いにスピンオフっぽくなってる。
チャタリス伯爵マーカスとウィンステッド伯爵ダニエルが友人役で出てるのです。かなりしっかりと。
前半の舞台がマーカスとホノーリアの結婚式なので出てくるのは当たり前なのですが、ちょっと嬉しくなっちゃいました。
「大嫌いなあなたと恋のワルツを」を読んだ時、意味ありげなキンロス公爵と婚約者イーディスが気になって、過去の作品を探してみたりしたんですよね。見つけられなかったけど。そりゃそうだよね^^;
向こうではアイリス・スマイス-スミスがチェロ奏者なので、エディスと親交があるくだりが描かれています。
思わずほくそ笑んじゃいます。

塔の上で愛を聴かせて (ライムブックス)

塔の上で愛を聴かせて (ライムブックス)

  • 作者: エロイザ ジェームズ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2014/07/10
  • メディア: 文庫



大嫌いなあなたと恋のワルツを (ラズベリーブックス)

大嫌いなあなたと恋のワルツを (ラズベリーブックス)

  • 作者: ジュリア・クイン
  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2014/06/10
  • メディア: 文庫



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「星降る庭の初恋」「花嫁は夜の窓辺で」「甘い嘘は天使の仕業」 エロイザ・ジェームズ [ライムブックス]

「星降る庭の初恋」

思い込みの激しい情熱家ヒーローのアレックスが酷いの一言に尽きる。
シャーロットは普通のお嬢さんで可も不可もないヒロインなんですが、アレックスの仕打ちが酷過ぎて、読んでいるのが辛かったです。
物語は一目惚れの再会物なので、私の大好物なんですが……。アレックスが最後までシャーロットの正体が分からないのが腹立たしい。それも、シャーロットが説明してるのに。
原因が全てアレックス自身の勘違いから発生しているので、彼女自身どうしようもなく、周囲の人にもどうしようもないものなので、余計に苛々が増しました。
誤解しては和解して、誤解しては和解するジェットコースターのようなストーリーが、切なさとストレスを断続的に掻き立てる、とっても疲れる作品です。
ただ、物語の展開のさせ方、筆力が高いんでしょうね、気持ち的には読むのが辛かった本なのに、あっという間に読了してしまいました。
設定やストーリー展開があまり好きではないのに、エロイザ・ジェームズの作品を思わず読んでしまうのは、この筆の巧みさですよね。
もっと登場人物を少なくして、主人公達だけにスポットを当ててほしいと毎回思うのですが、キャラが多くてバタバタした雰囲気はこれ以降の作品にも受け継がれている特徴なので仕方のない部分かな。



「花嫁は夜の窓辺で」

フォークス兄弟はお馬鹿で思い込みが激しいどうしようもない男性ということで結論ですね。
アレックスは怒りを外に向けるタイプ。パトリックは内に籠るタイプ。どちらも奥さんを傷つけまくりです。
ヒロインのソフィーも好きなタイプではなく、特にパトリックと結婚するまでの悪足掻きというか、自分の気持ちを認められない頑固さというか、そういう諸々が正にロマンス小説のイギリス女性の典型な感じで、ストレス溜まりまくりです。
頭が軽くてオシャレ好きの軽薄な今時レディ。でも、実は7ヶ国語を操る言語オタク。常に言語を勉強していなければ落ち着かないらしい。
この特技が後半に生かされて、話のメインになるのかと思いきや、そうでもなく、オスマントルコの使節団の話は(陰謀も)案外さらっと流されてしまっている。
まあ、冒険活劇ではないので二人の夫婦生活がメインになるのは仕方ないとしても、もう少し陰謀関係が話に絡んできてくれても良かったのにと、思いながら読んでいました。
終始、二人が意地を張り合い、悶々として泥沼化していく話になっているので。
ブラッドンとマドレーヌのカップルは可愛らしい感じで好きですが、ブラッドンがあまりにもおバカなのが残念でした。



「甘い嘘は天使の仕業」

ヒロインにクセがあって、万人受けしない。登場人物が多くて、何だかバタバタしている。あっちもこっちも何だか事件が起こってる。そして、何気になんちゃって救済物語。
エロイザ・ジェームズの特徴を全て詰め込んだ、彼女らしい作品なのではないかと思います。
エセックス姉妹シリーズが苦手な人は、これも苦手だと思われる。
物語の主題である「嘘」をどう捉えるか。自分の考えに凝り固まっちゃって暴走するヒロインを受け入れられるかが、作品を楽しめるかのキーポイントです。
ギャビーがエロイザ・ジェームズのヒロインらしい気性の持ち主で、好感が持てないかもしれません。でも、エロイザ・ジェームズってストーリーテラーだよな、といつも思います。
好きになれないキャラクターでも話は面白く読めるんです。
ページ数が多くてちょっと冗長かなっと感じますが、物語の流れに引き込まれると、一気に読んでしまえる面白さがありました。
リュシアンとエミリーのカップルの方は嫌いじゃないですが、それにページ数を取る必要はないんじゃないかなあと思いました。主人公達の話の展開とは違う所で恋愛してる感じだったので。前作のブラッドンとマドレーヌのようにきれいに主人公達に絡んでこないんですよね。
二人のシーンはページが増えるだけで話を散漫にしているだけのように感じました。
反対に前作の主人公が活躍していて嬉しくなります。そういや公爵夫妻なんだよね。パトリックが公爵って、何か違和感だわ。


処女作からのスピンオフ三作品ということで、荒削りなのは仕方のない所ですね。
エセックス姉妹の4部作もこの作風のままなので、4部作が好きな人はこちらも好みかも。

星降る庭の初恋 (ライムブックス)

星降る庭の初恋 (ライムブックス)

  • 作者: エロイザ・ジェームズ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2011/04/08
  • メディア: 文庫



花嫁は夜の窓辺で (ライムブックス ジ1-6)

花嫁は夜の窓辺で (ライムブックス ジ1-6)

  • 作者: エロイザ・ジェームズ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2011/08/10
  • メディア: 文庫



甘い嘘は天使の仕業 (ライムブックス)

甘い嘘は天使の仕業 (ライムブックス)

  • 作者: エロイザ ジェームズ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2012/02/10
  • メディア: 文庫



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「孤城に秘めた情熱」「初恋と追憶の肖像画」 エリザベス・ホイト [ライムブックス]

「孤城に秘めた情熱」 四人の兵士の伝説シリーズ 3

一作目からちらっと登場しているリスター公爵の愛人ヘレンがヒロインです。とはいうものの娼婦だった訳ではなく、17歳で公爵に囲われてからずっと公爵一筋です。
家政婦としてアリスター・マンローの朽ちかけた古城へ送られます。
前作終盤で、メリサンドがヘレンの逃亡先にマンローを選んだ時に、彼の事情を説明しているんだとばっかり思っていましたが、実は何の説明もなかったらしい。
いや、メリサンド、そりゃ駄目だろうよーー;
そして予想通りの出会い。そりゃそうだよねえ。
公爵の愛人として働いたことのないヘレンが家政婦として何とかアリスターの役に立とうと悪戦苦闘する所とか、初めて彼を見て悲鳴をあげて怖がったアビゲイルがアリスターに心を開いていく所など、徐々に彼の人生に三人が入りこんでいく様子が丁寧に描かれていて、あったかい気持ちになります。
でもね、アリスターですが、学者のくせに草食系男子ではなかったのが予想外で、残念な所でした。
自分の雇っている相手だというのに、葛藤も何もなく、愛人にしちゃう気満々ですぐに手を出してるのが嫌だ。
拷問によってできた、正視できないぐらいの傷跡で覆われた顔半分と、抉り出されて空洞になった片目のアリスターが身体だけではなく心にも深い傷を負っているのは誰にでも分かります。わかるから、ヘレンの心の傷にも気づいてほしかった所です。
ヘレンが自由になった後の対応も最低ですしね。
愛人との子供が二人もいるヒロインって私好みじゃないと思っていましたが、全編を通してのヘレンの前向きな頑張りは読んでて気持ちが良かったです。
だから、ヘレンのことを愛人としか思ってなくて、結婚を一度も考えなかったアリスターが傲慢で残酷だと思いました。
何処かで一度は考えてほしかった。そこに葛藤してほしかった。その事実がなかったのが残念です。


前二作は元軍人だったせいか、敵も暴力的だし解決も力技でしたが、今作は学者ということで、暴力的なシーンはありません。
国王を利用しての頭脳戦の勝利です。
更には次作では思わずニヤリとしてしまいました。
また、敵がスピナーズ・フォールズとは全く関係なかったし、アリスターの救済がメインのストーリーだったので、犯人探しは中座といった感じです。
元々彼は軍人ではないですしね。

寓話の「正直者」の物語は、王女と結婚して富を手に入れるのではなく、正直者が最後に王国を手に入れて王様になってから、王女にプロポーズするのが良かった。



「初恋と追憶の肖像画」 四人の兵士の伝説シリーズ 4

生きながらに焼き殺されたレノー・セント・オーバンがまさかのヒーローです。
って、前三作でみんなの目の前で焼き殺されてたじゃん! どういうトリックで助かるのよ?
と思ったら、みんな顔は分からなくて服でレノーと判断したとのこと。んじゃ、その時死んだのは誰なのよ? 裏切り者の謎に関係あるの?
など、こんな設定、もう、しょっぱなからワクワクが止まらないですよね。
前作から繋がるミステリーによって、出だしの盛り上がりは最高潮です。
そう……クライマックスは叔母のタント・クリスタルに出会うまでだった。つまり序盤ですーー;
後は申し訳ないけどエピローグって感じで、犯人はまあいいとしても、レノーとの関係が全くないし、無理やり物語を回収した感が否めない。
レノーは四作通じての謎と設定がその存在感を大きくしているのでとってもいい感じなのですが、最大の問題はヒロインです。
魅力はないし、ロマンスが面白くない。このヒロイン、必要ないよね?
彼女がいなくてもレノーの物語として、最終巻として話が成り立つし、その部分が面白かった。
レノーの六年間の話を聞く時に、せめて、メリサンドのように彼に寄り添える性格なら良かったのに、ただ聞いて同情するだけなんだよね。
自分のことでいっぱいいっぱいなのは分かるけど、あまりにもベアトリスが自分のことばっかりで、辟易してしまった。
表面的には心優しく芯の強いレディとなってますが、何か違うんだよなあ。なんだろ、この残念感。
ジェイミーの存在も中途半端で、うーん……何故かキャラが空回りしている感が強い。
ベアトリスがいなければ、ジェイミーとレノーの出会いなんて、議会での彼の発言へのとても良い動機に持っていけそうなんだけど……何が嫌って、ベアトリスがレノーを自分のことしか考えない自己中と憤慨する所とか、私のため?って思って感動したりするのが、それこそ彼女の自己中心的な考えが前面に出てて嫌だった。
作者が、ロマンスと犯人捜しを上手く絡ませることが出来なくて、ロマンス部分を何とか体裁をいい形にしてしまったってことなのかな。
たぶんベアトリスのレジー叔父さんが犯人ミスリードの位置にいたためなんだろうけど、色々と釈然としないものが残る話にもなっています。
「スピナーズ・フォールズの虐殺」の物語の最終巻としては、上手く纏まっていますし、納得の結末で良いんですけど……犯人も一作目からレギュラーですし、四作通して、ちゃんと自分の役割を演じてますしね。最後の方は小物感がものすごく出てたけど、次期首相がほぼ決定しているって時点で、かなりの権力者だと思う。つるんでるのがリスター公爵だし。
レノーが一人だけ連れ去られ、誰かが身代わりで焼き殺されたくだりの説明も必然性の説明がなかったよね?
それとも、その時焼き殺されたのが実はトマス・マドックだった? でも、そんな描写なかったよね?
何で、レノーだけが一人別で連れ去られたかの説明もないし、四人とも犯人の兄への陰謀にただ巻き込まれちゃっただけだから、レノーの犯人との繋がりがとっても薄くて、最後の対決がどうにも必然性を感じないんだよね。
各作品のサム・ハートリー×ソーントン、ジャスパー×マシュー・ホーン、アリスター・マンロー×リスター公爵(今作分も含めて)の対決はちゃんと必然性があり、結末としては納得いくものだっただけに、レノー×ハッセルソープの対決だけが何となくピンとこなかった。
いや、ハッセルソープの議会での面目を潰したって部分は良いんですけど、彼のレノーへの恨みも行動も論理的ではなくて、そこが小物感たっぷりで四作の締めとしては納得いかない所なのかもしれない。、
設定やキャラクターの配置など、とてもいい感じなのに、どうしてこんなに腑に落ちないんでしょうね。
終盤は一気に話が進む分、説明的なのに説明不足だったりしてます。
それとやっぱり、ヒロインがもっとうまく立ち回ってくれていれば、かなり面白い作品になっていた気がします。
ああー! ものすごく、もったいない!
こんなおいしいキャラなのに、レノー。

サム、ジャスパー、アリスター、レノーの揃う終盤はとっても豪華。
ずっと読んできた読者にはとっても嬉しい場面でした。

寓話「ロングソード」はそのまんまレノーの境遇ですね。物語的には他の話ほど捻りが利いてない気がしますが、直接レノーのストーリーを象徴していました。


孤城に秘めた情熱 (ライムブックス)

孤城に秘めた情熱 (ライムブックス)

  • 作者: エリザベス・ホイト
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2013/02/08
  • メディア: 文庫



初恋と追憶の肖像画 (ライムブックス)

初恋と追憶の肖像画 (ライムブックス)

  • 作者: エリザベス ホイト
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2013/12/10
  • メディア: 文庫



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「ひめごとは貴婦人の香り」「道化師と内気な花嫁」 エリザベス・ホイト [ライムブックス]

18世紀。フレンチ・インディアン戦争後の話です。
最近何故か、フレンチ・インディアン戦争づいています。この間パメラ・クレアの三部作読んだところだし。ま、こっちはまた後日アップするとして……。
戦争が題材だと話が重いですね。
このシリーズも、描写がとても辛いです。
ヒーローたちが戦争で負った傷をいやしていく物語になっています。一応。


「ひめごとは貴婦人の香り」 四人の兵士の伝説シリーズ 1

伯爵令嬢で男爵未亡人のレディ・エメリーンとアメリカ植民地の商人で元英国軍人平民サムの身分違いものです。とにかく走り続けるヒーローだしね^^;
とはいうものの、同じよう身分違いロマンスの「雨上がりの恋人」とは全然テイストが違うのは、ヒーローが植民地アメリカ出身だから?
だって、折角の身分違いロマンスなのに、全然、切なくない!
泣きたいような切なさがないんだもん。
エメリーンが頑固で傲慢で俗物すぎるのかなあ。ヒロインの魅力が全く分かりませんでした。
特に、明らかに戦争のPTSDを患っているだろうジャスパーと愛のない結婚をしようと本当に婚約してしまう辺り、自分勝手で視野狭窄で、私の一番嫌いなタイプです。
ロマンスのサム側は結構切ないですが、それでも彼に身分差の葛藤がなかったので、切なさが思ったのとちょっと違う。
でもまあ、サムが彼女を「酸っぱい青リンゴ」と例えているように、彼の好みはみんなが顔をしかめて嫌がるものらしいので、物語としてはヒロインの性格も納得です。

さて、このシリーズは「スピナーズ・フォールズの虐殺」の裏切り者に関する謎解きが物語の底流にあります。
本作では裏切り者は分からないまま終わり、次作に続きます。
ジャスパー以外の生き残りとしてスコットランドのアリスター・マンロー、大陸旅行中のマシュー・ホーンの名前が挙がっています。
四人の兵士の話なので、残りのヒーロー?と予想してしまいますね。
ジャスパーとメリサンドに関してはとっても気になります。
どうやらエメリーンの親友メリサンドがジャスパーに片思いしているらしい感じだし、そんなメリサンドにジャスパーは気づいていないだけではなく、その存在すら記憶に留めていないという徹底っぷり。
主人公二人より、よほどメリサンドの方が切ないよ~と思いながら中盤を読んでいました^^;

挿入されている寓話、アイアンハートの物語は素敵ですが、私はいまいち主人公達と関連づけさせられなかったです。



「道化師と内気な花嫁」 四人の兵士の伝説シリーズ 2

はい。前作でとっても気になっていたメリサンドがヒロインです。
もちろんヒーローは愉快な放蕩者ヴェール子爵ジャスパー・レンショー、レンショー元大尉です。
鈍感でおバカで戦争のPTSD持ちで、わざと明るく呑気者を演じているジャスパーは何気に私の好きなタイプ。外見はそんなにハンサムではないですが。
そして健気なメリサンドがいいんですよ。前作で片思い中というのは分かっていましたが、ホントにジャスパーの記憶に残っていなかったのね。名前すら覚えてもらってないって酷過ぎるよ。
ジャスパーのスピナーズ・フォールズの裏切り者探しが物語を引っ張っていくのかと思いきや、二人の結婚生活とジャスパーのPTSDがメインで話が進むので、前作ほどのスピード感はないものの、お互いの心情の機微がしっかりと描かれていて、とっても良かったです。
社交嫌いなだけで全然内気じゃないメリサンドに振り回され、彼女が気になって仕方なくなっていくジャスパー。ジャスパーの社交的で明るく呑気な性格の裏で抱える重い過去の記憶や罪悪感。五年間見つめてきたからこそ彼の痛みに寄り添えるメリサンド。そして、昔には戻れないものの、徐々に癒されていくジャスパー。
前作も傾向としては癒しの物語ではあったのだけど、ヒーローのトラウマの重さが、そのまま物語の重さになっているためか、今作の方が辛いですね。身体に見える傷がない分余計にジャスパーの闇が深い気がします。
結局ラストでもトラウマ解消できなくて、ベットで眠れない二人だし。まあ、かなり癒されたのは確かだし、罪悪感も軽くはなったんだけどね。
最後までジャスパーの心に寄り添うメリサンドと、メリサンドの過去を優しく包み込むジャスパー。どちらも素敵でした。

しかし、マシュー・ホーンがヒーロー候補ではなかったとは……。
次作は拷問に傷付いたマンローと前作にも出てきたリスター公爵の愛人で二人の子持ちのヘレンですね。
エメリーンとの会話から、メリサンドが本質を見誤らないし、無暗に批難もしない素敵な女性なのは分かっていましたが、実はお節介でもあったのね。
最後は二人に対して力技ですよ、メリサンド^^;

寓話「愉快なジャック」の物語が良いですね。ジャックがジャスパーを彷彿とさせます。

ひめごとは貴婦人の香り (ライムブックス ホ 1-4)

ひめごとは貴婦人の香り (ライムブックス ホ 1-4)

  • 作者: エリザベス・ホイト
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2011/07/08
  • メディア: 文庫



道化師と内気な花嫁 (ライムブックス)

道化師と内気な花嫁 (ライムブックス)

  • 作者: エリザベス・ホイト
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2011/12/09
  • メディア: 文庫



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「あなたという仮面の下は」「雨上がりの恋人」「せつなさは愛の祈り」 エリザベス・ホイト [ライムブックス]

エリザベス・ホイトのヒストリカルロマンスは18世紀半ばの英国を舞台としています。
この頃はまだ英国の黄金期ではないし、スコットランドではジャコバイト運動後。黄金期が終わりかけていたのはフランスで、アメリカ大陸ではフレンチ・インディアン戦争の頃。
決闘もそれを禁止する法律がまだない時代。決闘での殺人が罪となるのはリージェンシーからだよね。まだまだ血なまぐさい時期です。
いわゆる近世と呼ばれる時代に属し、フランス革命後の近代であるリージェンシーとは雰囲気が異なります。
上流階級の男性が化粧をし、白いかつらをかぶり、ヒールの靴を履いている時代。
本を読みながら「ニコラ・ル・フロック」を思い出さずにはいられませんでした。この時代を視覚的に理解しようと思ったら一番分かりやすいTV番組です。
特にかつらやヒールの革靴、紅い唇などの表記が出てくると、サルティンヌ総監を思い出して、妙にコミカルな雰囲気を感じてしまった。
この時代の男性の服飾に関しては、頭の中で想像するとシリアスな場面では雰囲気が壊れてしまうよね^^;



「あなたという仮面の下は」

外見が良くないヒーローは珍しくないですが、大抵は怪我で顔半分が醜くなってるパターンです。痘痕で醜い顔というのは初めて読んだかも。
実際、痘痕面って、天然痘がなくなった私達現代人にはピンときませんよね。どれだけ醜いかも分かりづらかったです。この痘痕がエドワードの強いコンプレックスになっているから、気になって仕方がありませんでした。とりあえず、額から目の周辺が物凄いニキビ面っていうのを想像しながら読んでいましたけど。
そして、ヒロインのアンナは貧乏平民子なし未亡人で、不美人な31歳。
伯爵と平民の身分差ものですが、そこはそんなに切なくなかった。
娼婦の振りしてエドワードと二夜を共にしたことがばれるのが思ったより早くて、それに対してエドワードがプロポーズするのも早かったので、ドキドキワクワクハラハラとストレスをあまり感じなかった。
まあ、二人とも互いにメロメロだったってことなんだけど。
結婚に対しての二大障害物(身分差と不妊……特に不妊の方)があったというのに、エドワードがあっさりクリアしてしまってるのは、ストレスなく読めると捉えるか、葛藤がなさすぎと捉えるかでロマンスへの判断が分かれる所かも。
設定がちょっと変わってるし、普通に面白かったですが、ストーリーはあまりピンとこなかったかな。
アンナの行動はまあいいとして、考え方に共感できなかったから、思ったほど入りこめなかったのかも。
男は情事を何も言われないのに、どうして女は情事をしてはいけないのって、やつね。



「雨上がりの恋人」

前作でスフォーティンガム伯爵の農業オタク(?)仲間だったハリー・パイがヒーローです。
ヒロインのジョージが28歳オールドミスの伯爵令嬢で、ヒーローのハリーが平民の土地差配人という、身分差ものです。
女性がレディの称号を持っていて、男性側が平民の身分差もののストーリーって切ないんだよね。
それにこのハリー、物静かでとても地味な人という設定で、何やら謎のありそうな人物でもあります。その謎が、また、辛すぎる!
彼は資産家でもないし、古い家柄でもないし、親族に貴族がいるという訳でもないし、貴族の私生児でもないし(ここの所はあやふやなままでしたが)、貧救院に入ってたし、ストーリー上そういう意味での救済は一切なく、とにかく実力で土地差配人にまでのし上がった人です。
身分差ものってだけで十分切ないに、ハリーの生い立ちがこれまた酷くて、更にストーリー展開も残酷で、とっても辛い物語です。
ジョージーがハリーに対してとても素直で、好感のもてる人柄だったのが救いでした。終盤にハリーから逃げて他の人と結婚するのはいただけませんが、ラストのプロポーズシーンのためならそれも仕方ないです。
前作より私好みの物語と主人公たちでした。
脇役の皆さんも個性的で良かったし。
最後は登場人物みんなが集まってワイワイガヤガヤと大団円ですっきりでした。



「せつなさは愛の祈り」

三作品の中で一番好きでした。
洒落者のイズリー子爵サイモンのケダモノぶりにもうドキドキですよ
自分の行いを理解していて、理由が何であれ、それが言い訳もできないほど罪深く、自らが罪人であることを分かっているが故に、求めてはいけないと思いながらも、彼の天使であるルーシーから離れられないヒーローの弱さが切ないです。
前作まで洒落者で放蕩者でおしゃべりなあまり真面目にならないような印象を残していたサイモンですが、実は兄の敵討に人生の全てを注いでいて、かなり暗い思考回路の持ち主です。
ルーシーにメロメロというよりも、本気で彼女がいなければ生きていけないらしい生命力の弱さとか、それが分かってるから求め過ぎてしまう意思の弱さとか、ある意味のヘタレっぷりが素敵です。
自分の復讐にルーシーを巻きこんではいけないと彼女を遠ざけていたくせに、彼女から離れていられないとすぐさま決断を下してプロポーズしてしまう弱さは、ロマンスのヒーローには珍しいかも。もう少し側にいたいのにいられないってネタで引っ張るのかなっと思っていたので、とっとと結婚して、べたべたな夫婦になってしまうのが早かったのは予想外。
この作品はサイモンが全てです。ルーシーはただサイモンの天使だというだけ。サイモンに愛と許しを与えるだけの存在です。でも、それだけでいいのです。
ルーシーが次第にサイモンの生きる糧になっていく。それによってサイモンが救われる話だから。
彼女がいなくなった後、丹精込めて育てた薔薇をすべて破壊して、戻らない覚悟をして最後の決闘に向かったシーンはとっても印象的でした。
ルーシーにはできれは、最後まで逃げないでいてほしかった。そのぐらいの気骨があっても良かったと思ったけど、彼女ってただのお人よしの女の子であって、強い人ではないんだよね。
人生と戦うタイプのヒロインではないので、逃げ出しちゃうのも仕方がなかったとは思う。平凡で善良な彼女だからこそサイモンにとっての天使になれるんだろうし。

今作、エドワードが地味に大活躍です。とってもまともな人に見える。結婚して人柄が落ち着いたということなのかしら。

全作に王子様が出てくる童話が挿入されているんですが、ストーリーの合間に出てくるのですが、話がプチプチ切れるので、前回までの話を思い出せなくなったのは私だけなんだろうか。

あなたという仮面の下は (ライムブックス)

あなたという仮面の下は (ライムブックス)

  • 作者: エリザベス・ホイト
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2009/03/10
  • メディア: 文庫



雨上がりの恋人(ライムブックス)

雨上がりの恋人(ライムブックス)

  • 作者: エリザベス・ホイト
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2009/09/10
  • メディア: 文庫



せつなさは愛の祈り(ライムブックス)

せつなさは愛の祈り(ライムブックス)

  • 作者: エリザベス・ホイト
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2010/04/10
  • メディア: 文庫



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「優しい午後にくちづけて」 リサ・クレイパス [ライムブックス]

「優しい午後にくちづけて」 ザ・ハサウェイズ5

シリーズ最後の作品。末っ子、動物たちの救世主ベアトリクスがヒロインです。
この話しは他の4作品と違い、前後の繋がりがないので、あまり思い入れなく読み始めました。ヒーローも今まで登場した人ではなかったしね。
クリミア戦争に出兵しているヒーロー・クリストファーと友人の振りをして彼に手紙を出すベアトリクスやり取りが切ないです。
まさか、あのお茶目な動物好きのベアトリクスの物語が、こんな切なく始まるとは思ってもみなかったです。
そして、ちょっと分からなかったんだけど、中盤でクリストファーがプルーデンスの父親に求愛の許可を取ったくだりがあり、その後、婚約まで秒読みといった感じで話が進んでいきますが、あれはプロポーズしてないからセーフって、ことだったのかな?
許可を求めに行った時点で、泥沼系の話になるのかと身構えたんですが、かなりあっさりプルーデンスのことはなかったことになり、障害なくベアトリスト結婚してしまったので、少し拍子抜けしてしまったんですよね。
クリストファーが愚かではなく、冷静で、誠実だったので、ベアトリスは泥沼の切ない思いをせずに済んで、私も気持ち良く話を読めたのは確かですが……。
ヒーローがおバカさんではなかったということで、それだけでもかなりの高評価です。
ロマンス部分は早々に終了し、中盤以降の3分の1は、戦争によるクリストファーのPTSD(心的外傷後ストレス障害)に関してがメインになっていきます。
二人ともラブラブで、間に横たわっているPTSDをベアトリクスがどう解決するかといった方向に話が向かうと思ってたんですが、あんな劇的な展開になって解決するとは……。
傷付いた2足歩行の動物を彼女が癒していく話のはずなんだけど、なんか、最後は力技で解決させられた感じがしました。
うーん……ロマンス部分は完璧だっただけに、ご都合主義的な結末が……まあ、それをいえば、他の話も同じように都合良いタイミングでの力技での解決っていえばそうなんですけどね。
ということで、それもこれも全部、運命なのです。

皆さんの感想見てて、ザ・ハサウェイシリーズが絶対に面白いことが分かっていたんですよ。
だからこそ読まずに取っておいたんです。
そして、期待は全く裏切られず、大満足で読み終わりましたが、そのことがものすごく残念です。
もっと読んでいたかった。
再読はするでしょうが、初めて読んだ時のような読む手が止まらないワクワク感はもう感じられないのよね。
面白いのが分かっていて、読み終わった後の祭りの後のような残念感を感じるだろうことも分かっていたからこそ、手を出せなかった作品なんですが。
現在の心境は予想通りの結果になっています。
物語を全く知らなかった状態には戻れないもんなあ。
ああ~やるせない。

優しい午後にくちづけて (ライムブックス)

優しい午後にくちづけて (ライムブックス)

  • 作者: リサ・クレイパス
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2012/11/09
  • メディア: 文庫



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「黄昏にほほを寄せて」「純白の朝はきらめいて」  リサ・クレイパス [ライムブックス]

「黄昏にほほを寄せて」 ザ・ハサウェイズ3

ホテル・ラトレッジの謎のオーナーがヒーローと聞いてとっても期待していた作品です。
主人公は三女ポピーとラトレッジのオーナー、ハリー・ラトレッジ。
出会った瞬間から、ハリーがポピーにメロメロです。
欲しい物を手に入れるために、どんな手でも使うやり手ビジネスマンのハリー。
ポピーを手に入れるための策略は卑劣です。この行為が、財産目当てだったり、ヒーロー以外の人だったらただの卑劣漢の悪役なんだよね。ハリー自身が言ってるように。
その卑劣な行為をしたハリーにポピーが結構あっさり気を許しちゃってる所が彼女の長所なのかな。結局はハリーに惹かれてたってことなんだけど。
孤独で仕事一筋のハリーがポピーとの生活によって、変わっていく様はとっても面白かった。結婚後にハリーが悶々するのがとっても見物でした。
そして、ポピーが刺々しくないから、ストーリー展開の割にストレスが溜まらなかったし、読み易かった。
ハンプシャーに舞台を移してからのハサウェイ家勢ぞろいの中にハリーが入っていく所も、ほのぼのとしていて微笑ましくて良かったです。
愛を知らないまま育ったヒーローが、次第に自分の中の愛を見つけてゆく。
とても王道の話ではありますが、期待通りで大満足の作品でした。

しかし、長女・次女の夫が兄弟で、三女・長男の伴侶も兄妹って、結婚しなくても元々身内なわけね。
今回もレオがしっかりお兄さんしているし、大活躍してます。家庭教師のミス・マークスの身元も少しだけ明かされます。ミス・マークスとの関係が始まりだして、次作が気になる終わり方。
前2作がロマのコール兄弟(うわ、慣れない名前だ^^;)のストーリーとすると、今作と次作はラトリッジ兄妹の物語です。



「純白の朝はきらめいて」 ザ・ハサウェイズ4

ハサウェイ家長男レオと家庭教師キャサリン・マークスの物語。
2作目から気になる二人の話です。
今作は当たり前ながら、レオの独壇場ですね。でも、前作でレオの出番が多かったのと同じく、ハリーの出番がとっても多いです。今回はハリーが頑張ってお兄さんをしています。

レオのキャラが素晴らしい! (私目線^^;)
かつては何処にでもいるような真面目な好青年で、そのまま何事もなく生きていたら、ほどほどの成功と幸運に恵まれて、爵位を継承してもきっと変わらず平凡な人生を送っていただろうと思うんだけど、そんな男性が運命のいたずらで目の前で愛する人を失い、絶望に囚われて這い上がることができなくなってしまった所とか、絶望から生還した後、新たに自分で作り上げた人格があって、既にそれが地なのか敢えてそう見せているのか、おそらく本人にも分からなくなっているんじゃないかと思わせる所とか、呑気で楽観的な様子でありながら全く正反対の性質である厭世感を醸し出し、人生を達観して、自分の物語を紡いでいくことができなくなっている所とか、闇が深かった分闇から抜け出してもなお、再びその闇に落ちて家族を傷つけてしまうことを恐れている所とか、今作中ではそういった内面が悶々と語られることはあまりないんだけども、一作目からのレオが確実にそういった変化を遂げていて、苦悩とそれから抜け出すために足掻いて、自分自身で今の自分を作り上げた所とか、一作目からこうなりそうな気はしていたんですが、私の好み直球ど真ん中です。
更に、とにかくしゃべるしゃべる。良くしゃべる。こんなおしゃべりヒーロー見たことがないくらい良くしゃべる。
深い闇を抱えながら、それでも前向きで明るいという矛盾に溢れたヒーローが大好きなので、どうにもならないぐらいレオが好きです。
愛情深い部分が、死んだ伴侶の後を追って亡くなった母親からきていて、多分に母親似であることを彼自身が分かっていて、人を愛することを知っているから、その深い愛が失われた時に自分がどうなるか実感を持って予想できるからこそ愛を求めることを自制するレオと、夫を捨てて愛人と逃げた子どもを愛さない母親と娼館の主人を母に育てられ、成長してからも幼い妹さえ犠牲にして娼館の富で自堕落に生きている父親の元、庶子として生まれてから愛し愛された記憶がない上に、愛してくれて当然の人たちが皆裏切って去って行ったゆえに愛を求めることを自制するキャット。更には父方の祖母と叔母に刷り込まれた歪んだ女性としての性のあり方も彼女が彼女自身と愛を否定する原因になっていたわけです。
前作も同じ構図でした。愛を知らないラトリッジ兄妹と愛に溢れたハサウェイ家との比較が顕著な作品です。

レオとキャットのキスシーンが素敵です。なぞなぞが楽しい*^^*
難があったのは、ブロンドに戻ったキャットを見て初めて美人な彼女に気づいてレオが欲望を覚えたこと。
恐らく初めての出会いから興味を覚えてはいたんだろうから、外見に気づく前にそういう気持ちになって欲しかったなあ。

二作品まとめて、文句なしに面白かったです。

黄昏にほほを寄せて ((ライムブックス))

黄昏にほほを寄せて ((ライムブックス))

  • 作者: リサ・クレイパス
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2011/06/10
  • メディア: 文庫



純白の朝はきらめいて (ライムブックス)

純白の朝はきらめいて (ライムブックス)

  • 作者: リサ クレイパス
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2012/04/10
  • メディア: 文庫





「夜色の愛につつまれて」「夜明けの色を紡いで」 リサ・クレイパス [ライムブックス]

何故、今さらのザ・ハサウェイシリーズ?と突っ込みが来そうですが……読み終わりました~
というより、読んでしまいました;;
リサ・クレイパスの作品は基本外れがないとは思いますが、主人公たちが非常に個性的で、特にヒロインのタイプが多岐にわたっています。
それ故、ヒロインが合わないと、読む気が失せてしまう作品も……^^;
で、多くのファンの例に洩れず、彼女の作品の中で私の一番のお気に入りが「壁の花」シリーズの「冬空に舞う堕天使と」なのです。
たぶん今まで読んだヒストリカルロマンスの中でもトップ10に入ります。
だから、もちろんキャムのその後が知りたかったし、ザ・ハサウェイシリーズも読む気でずっと手元に持っていました。それもちゃんと本屋購入で><(基本的にお気に入りの作家さんはちゃんと本屋で購入するようにしてます。売り上げがなくて邦訳本が出なくなるのが嫌だから)
にもかかわらず、読む楽しさがなくなってしまうのが怖くて、今まで読めませんでした。
読みたいけど読みたくない、新刊購入して本棚に眠っている作品がいくつかあります。リサ・クレイパスのザ・ハサウェイシリーズとメアリ・バログのシンプリーカルテットシリーズなんて、その最たるものです。
そして、とうとう手を出してしまいました。


「夜色の愛につつまれて」ザ・ハサウェイ1

「冬空に舞う堕天使と」で登場したロマのキャムがヒーローです。ヒロインはハサウェイ家の長女アメリア。
前述のように期待が大きくて……いえ、ヒロインに難がある可能性はかなり覚悟していましたが、なんだろう、この残念感は。
ヒロインは読者の好き嫌いが分かれそうなタイプです。
責任感が強くて家族思いの長女。ってのは私の好きなタイプなんですが、追いつめられると視野が狭くなり、悲劇のヒロインタイプになる女性的なキャラは苦手です。
でも、男兄弟のいる長女って感じが上手く出てるキャラだなあと思いました。
本当の年長者じゃないので、他人が解決してくれることはお任せできちゃうんですよね。男兄弟のいない長女だと、頼る相手がいても絶対頼りきりにはなれないからね。自分も負担したい荷物を二人で持つタイプか、相手に全部持ってもらって平気なタイプかで好き嫌いが分かれそうな性格でした。もちろん私は前者の方が好き。
キャムはロマの血を引いていることが唯一の欠点の、何でもできるスーパーヒーローですが、困ったことにあまり食指が動かなかった。おかしいなあ、前作で出てきた時は、絶対好みのヒーローだと思ったんだけど……。
レオやメリペンの方がよっぽど闇が深くて好きかも。
たぶん、キャムは作中色々考えはしてるけども、既にロマとアイルランド人の血に折り合いがついてるんですよね。それを実生活でどう投影するかが問題で。だからぐだぐだ考えていた訳で、特に深刻な悩みがあった訳でもない。あまり悶々することがないから、思った以上に惹かれなかったのかも。
ハサウェイ家自体はいろんな問題を抱えていて崩壊寸前だったけど、主人公のロマンス的には何も問題がなかったのも、あまり作中に入って行けなかった理由の一つかも。
そして、次作以降の伏線としての問題提起が多いことでロマンスに集中できなかったのも要因の一つかな。
やっぱりヒーローの苦悩は必要だと思う。キャムはちょっと人間が出来過ぎだったようだ。(私にとっては)

キャム側の脇役としてエヴィーとセントヴィンセントの登場はかなり嬉しかったです。
そういえば、蜂の部屋で見つけた宝の箱はレオに渡ったんだろうか? そういうくだりは次作以降でもなかったような……。まあ、キャムがいるからハサウェイ家はもうお金の心配はしなくていいんだけどね。



「夜明けの色を紡いで」ザ・ハサウェイ2

おお!レオがまともになってる!
っていうのが第一印象。
この作品、メリペンとウィンが主人公だけあって、ハサウェイ家の過去がしっかり描かれています。
メリペンがハサウェイ家の家族になるくだりから、例の猩紅熱でウィンとレオが死にかけた頃の事まで。
前作とは違いハサウェイ家の問題は大方良い方向へ向かっているので、メリペンの問題だけに集中することが出来て非常に読み易く、感情移入しやすかったです。
更に、ヒロインのウィンが自分の気持ちにとっても素直で、物語開始時点で既に愛を告白してるのも気持ち良かったです。
話としては、メリペンが自分の闇の部分と向き合って、引け目なくウィンを手に入れようと決心するまでが読みどころ。
留置所でのレオとメリペンの会話にハッとしました。前作、レオのメリペンに対しての態度が理解できたからです。自分は死ぬつもりだったくせに。と思って恨んでたんだね。
そして、つかみどころのない飄々とした印象を与えるレオですが、今回の件ではちゃんと長男してる所にぐっときました。

ロマンスとは別に前作から引き継がれている大きな物語の流れがあります。キャムとメリペンの出自の謎です。
終盤の毒殺未遂、キャムの従兄との出会い、二人の祖父の訪問と、3年近く何も分からない状態だったのに、ここにきてのたたみ掛けるような展開についてはご都合主義的な所が多分にありましたが、二人の結婚式に合わせてこうなるようになっていた。ってことで、ロマの言葉を借りれば、運命ということですね。
謎の家庭教師ミス・マークスも登場して次作以降が楽しみです。


夜色の愛につつまれて (ライムブックス)

夜色の愛につつまれて (ライムブックス)

  • 作者: リサ・クレイパス
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2008/12/10
  • メディア: 文庫



夜明けの色を紡いで (ライムブックス)

夜明けの色を紡いで (ライムブックス)

  • 作者: リサ・クレイパス
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2010/03/10
  • メディア: 文庫



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