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「あなたという仮面の下は」「雨上がりの恋人」「せつなさは愛の祈り」 エリザベス・ホイト [ライムブックス]

エリザベス・ホイトのヒストリカルロマンスは18世紀半ばの英国を舞台としています。
この頃はまだ英国の黄金期ではないし、スコットランドではジャコバイト運動後。黄金期が終わりかけていたのはフランスで、アメリカ大陸ではフレンチ・インディアン戦争の頃。
決闘もそれを禁止する法律がまだない時代。決闘での殺人が罪となるのはリージェンシーからだよね。まだまだ血なまぐさい時期です。
いわゆる近世と呼ばれる時代に属し、フランス革命後の近代であるリージェンシーとは雰囲気が異なります。
上流階級の男性が化粧をし、白いかつらをかぶり、ヒールの靴を履いている時代。
本を読みながら「ニコラ・ル・フロック」を思い出さずにはいられませんでした。この時代を視覚的に理解しようと思ったら一番分かりやすいTV番組です。
特にかつらやヒールの革靴、紅い唇などの表記が出てくると、サルティンヌ総監を思い出して、妙にコミカルな雰囲気を感じてしまった。
この時代の男性の服飾に関しては、頭の中で想像するとシリアスな場面では雰囲気が壊れてしまうよね^^;



「あなたという仮面の下は」

外見が良くないヒーローは珍しくないですが、大抵は怪我で顔半分が醜くなってるパターンです。痘痕で醜い顔というのは初めて読んだかも。
実際、痘痕面って、天然痘がなくなった私達現代人にはピンときませんよね。どれだけ醜いかも分かりづらかったです。この痘痕がエドワードの強いコンプレックスになっているから、気になって仕方がありませんでした。とりあえず、額から目の周辺が物凄いニキビ面っていうのを想像しながら読んでいましたけど。
そして、ヒロインのアンナは貧乏平民子なし未亡人で、不美人な31歳。
伯爵と平民の身分差ものですが、そこはそんなに切なくなかった。
娼婦の振りしてエドワードと二夜を共にしたことがばれるのが思ったより早くて、それに対してエドワードがプロポーズするのも早かったので、ドキドキワクワクハラハラとストレスをあまり感じなかった。
まあ、二人とも互いにメロメロだったってことなんだけど。
結婚に対しての二大障害物(身分差と不妊……特に不妊の方)があったというのに、エドワードがあっさりクリアしてしまってるのは、ストレスなく読めると捉えるか、葛藤がなさすぎと捉えるかでロマンスへの判断が分かれる所かも。
設定がちょっと変わってるし、普通に面白かったですが、ストーリーはあまりピンとこなかったかな。
アンナの行動はまあいいとして、考え方に共感できなかったから、思ったほど入りこめなかったのかも。
男は情事を何も言われないのに、どうして女は情事をしてはいけないのって、やつね。



「雨上がりの恋人」

前作でスフォーティンガム伯爵の農業オタク(?)仲間だったハリー・パイがヒーローです。
ヒロインのジョージが28歳オールドミスの伯爵令嬢で、ヒーローのハリーが平民の土地差配人という、身分差ものです。
女性がレディの称号を持っていて、男性側が平民の身分差もののストーリーって切ないんだよね。
それにこのハリー、物静かでとても地味な人という設定で、何やら謎のありそうな人物でもあります。その謎が、また、辛すぎる!
彼は資産家でもないし、古い家柄でもないし、親族に貴族がいるという訳でもないし、貴族の私生児でもないし(ここの所はあやふやなままでしたが)、貧救院に入ってたし、ストーリー上そういう意味での救済は一切なく、とにかく実力で土地差配人にまでのし上がった人です。
身分差ものってだけで十分切ないに、ハリーの生い立ちがこれまた酷くて、更にストーリー展開も残酷で、とっても辛い物語です。
ジョージーがハリーに対してとても素直で、好感のもてる人柄だったのが救いでした。終盤にハリーから逃げて他の人と結婚するのはいただけませんが、ラストのプロポーズシーンのためならそれも仕方ないです。
前作より私好みの物語と主人公たちでした。
脇役の皆さんも個性的で良かったし。
最後は登場人物みんなが集まってワイワイガヤガヤと大団円ですっきりでした。



「せつなさは愛の祈り」

三作品の中で一番好きでした。
洒落者のイズリー子爵サイモンのケダモノぶりにもうドキドキですよ
自分の行いを理解していて、理由が何であれ、それが言い訳もできないほど罪深く、自らが罪人であることを分かっているが故に、求めてはいけないと思いながらも、彼の天使であるルーシーから離れられないヒーローの弱さが切ないです。
前作まで洒落者で放蕩者でおしゃべりなあまり真面目にならないような印象を残していたサイモンですが、実は兄の敵討に人生の全てを注いでいて、かなり暗い思考回路の持ち主です。
ルーシーにメロメロというよりも、本気で彼女がいなければ生きていけないらしい生命力の弱さとか、それが分かってるから求め過ぎてしまう意思の弱さとか、ある意味のヘタレっぷりが素敵です。
自分の復讐にルーシーを巻きこんではいけないと彼女を遠ざけていたくせに、彼女から離れていられないとすぐさま決断を下してプロポーズしてしまう弱さは、ロマンスのヒーローには珍しいかも。もう少し側にいたいのにいられないってネタで引っ張るのかなっと思っていたので、とっとと結婚して、べたべたな夫婦になってしまうのが早かったのは予想外。
この作品はサイモンが全てです。ルーシーはただサイモンの天使だというだけ。サイモンに愛と許しを与えるだけの存在です。でも、それだけでいいのです。
ルーシーが次第にサイモンの生きる糧になっていく。それによってサイモンが救われる話だから。
彼女がいなくなった後、丹精込めて育てた薔薇をすべて破壊して、戻らない覚悟をして最後の決闘に向かったシーンはとっても印象的でした。
ルーシーにはできれは、最後まで逃げないでいてほしかった。そのぐらいの気骨があっても良かったと思ったけど、彼女ってただのお人よしの女の子であって、強い人ではないんだよね。
人生と戦うタイプのヒロインではないので、逃げ出しちゃうのも仕方がなかったとは思う。平凡で善良な彼女だからこそサイモンにとっての天使になれるんだろうし。

今作、エドワードが地味に大活躍です。とってもまともな人に見える。結婚して人柄が落ち着いたということなのかしら。

全作に王子様が出てくる童話が挿入されているんですが、ストーリーの合間に出てくるのですが、話がプチプチ切れるので、前回までの話を思い出せなくなったのは私だけなんだろうか。

あなたという仮面の下は (ライムブックス)

あなたという仮面の下は (ライムブックス)

  • 作者: エリザベス・ホイト
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2009/03/10
  • メディア: 文庫



雨上がりの恋人(ライムブックス)

雨上がりの恋人(ライムブックス)

  • 作者: エリザベス・ホイト
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2009/09/10
  • メディア: 文庫



せつなさは愛の祈り(ライムブックス)

せつなさは愛の祈り(ライムブックス)

  • 作者: エリザベス・ホイト
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2010/04/10
  • メディア: 文庫



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