SSブログ

「薔薇色の恋が私を」「愛が薔薇色に輝けば」「薔薇の誓いと愛を胸に」 コニー・ブロックウェイ [ライムブックス]

長く未読本に山積みしていた作者コニー・ブロックウェイの「薔薇の狩人(ローズ・ハンター・トリロジー)」3部作。
何となく積んでたんですよね。
そして、何となく手を出してみた。
ローズハンターの三人とナッシュ家の三人とのお話。



「薔薇色の恋が私を」

物語全体がフランス革命前後からナポレオン戦争の前半までが舞台となっていて、実はそれと密接に繋がって物語が練られているのが、各章に挿入されている年号などで分かります。
歴史を知っていると、ローズハンター達の立場や状況の理解に役立ちます。
物語の起点になっている、ナッシュ家に三人が現れた1801年、この時三人はフランスで捕らえられて2年間獄中で過ごした直後でした。
彼らの育った修道院はもちろんカトリックですから、彼らの諜報活動は教皇領が消える1798年のローマ共和国建国に端を発している訳です。
でも、そんなこと知らなくてもロマンス小説なので、楽しく読めるんですけどね。

そんな激動の時代、完全なスコットランド人のキットとナッシュ家次女ケイトの話。
いわゆるハイランダーがヒーローだと、何となく泥臭いロマンスになるのは何故なのだろう^^;
たぶん、イングランド側から見たスコットランドのイメージが付いて回るんだろうなあ。
この話、キットがハイランダーそのもののキャラの上、平民庶子、財産地位なしなもんで、更に地味な感じになってます。(大尉なので、普通に考えればかなりの出世だし、地位もあるんだけど)
ヒロインも金なし貧乏未亡人だし、舞台が冬のハイランドだしで、一層、地味に暗い。
全編通して横たわる重苦しさは見事です。タイトルのきらびやかさとは正反対。
でも、始めの印象よりは楽しく読めました。
三部作の一話目なので続く最大の謎があるんですが、それ以外は上手く収まる所に収まっていました。



「愛が薔薇色に輝けば」

美形ヒーローと絶世の美女ヒロインの組み合わせ。美形同士というのは珍しい。
物語は面白かったのですが、ヒロインのヘレナがちょっと微妙だったかな。
どうやら私は絶世の美女というキャラクターが苦手らしい。それに、結局のところ、最後までヘレナが考えが足らないというか、表面的というか、底が浅い感じがした。
マンローは欠点のない美形貴公子系のヒーロー。
庶子というのが欠点なんだけど、両親はスコットランドで結婚してるんだよね。お母さんはスコットランドの元伯爵家の娘だから血筋は良いし、本当に欠点のない設定だ。
イングランドでは英国国教会とカトリックとの結婚が認められないって辺りの法律が良く分からなかったんだけど、18世紀と19世紀で結婚についての法律が変わったのかな?
それとも貴族に関しては、英国国教会同士でないと結婚できない法律があったのかな?
調べてみたが分からなかったわ^^;
まあ、そういった良くある(?)事情から庶子として父方の祖父から見捨てられて修道院に引き取られたマンローは、ある程度の年齢まで上流階級の嫡男として育てられているので、キャラクターがしっかり紳士で、安心して読んでいられます。
今作はリージェンシーらしく華やかさがあって、最終的にヒーローが金落ちの貴族になるし、ヒロインは未婚の処女だし、三作品の中で一番一般受けしやすい内容でした。
ステレオタイプの話なので、面白みや新鮮味はないですが、安定した話の展開になってました
謎は一話同様そのまま続きます。でも、あの人が犯人なんだろうなあというのは前回同様想像ついてるんですが、ミスリード役のキャラがもう一人増えてましたね。あれ、前作から出しておかないと……と思ってしまった。



「薔薇の誓いと愛を胸に」

三作品の中で、この作品が一番好き。
捻くれヒーローが好きなのでロスが良かったし、軽薄を演じながら実は堅実で現実的なシャーロットが良かった。
ヒロインがバカなことをして、ヒーローを危機に陥れるパターンが多い諜報物ですが、この作品はそんなシーンがなく、最後まで一貫して密偵を貫こうとするとても有能なシャーロットが素晴らしい。
一話目の冒頭が、今から考えると彼女の未来を暗示していたんだなあと思いました。
実は後半に入るまでロスの心の内があまり見えなくて、前二作に比べるとメロメロ度が低く感じてたのですが、いえいえ、そんなことございませんとも。
シャーロットの評判を落とす作戦中は話があまり進まなくてじりじりしますが、サン・リヨン伯爵の手紙が届いてからの怒涛の展開は読む手が止まりませんでした。
ロスの葛藤やら嫉妬やら何やらが実においしい。
二人がラブラブしている所に助けに飛び込んでくるキットとマンローのラストも何度読んでも楽しいです*^^*

1806年7月14日……ライン同盟成立直後ですね。更には手紙がプロイセンの大使からローマ法王宛てということで、第四次対仏大同盟も関係してきてるんだろうな。
ナポレオンが行け行けで、まだイギリスが本腰を入れ始めた頃だから、世界情勢がおもしろいことになっています。
更にはロスの過去の関係で、スコットランドに辿り着いた1788年と経緯でピンときます。ブルボン家の出身ってことで、設定が上手いなあと思った所です。
ま、一話と同じで歴史的背景を気にしなくても楽しく読めるんですけども。
元々、ロスだけにローズハンターの任務に意義があったし、その後も彼が修道院長の諜報活動を続けていた理由なんですよね。
シャーロットと同じく二足わらじを履いてたようだし。
アンドレ・アンリ・ルースがロスの本名だよね。
アンドルー・ロスとして諜報活動を行いながら、アンドレ・ルースとして反ナポレオンで活動してたのかなあと、思ったり。でもその辺りのことは詳しく書いてないんだよね。
どういう経緯でナイトの称号を得たのかも気になる所でした。やっぱり第四次対仏大同盟に貢献したからかなあ。
歴史的事実と上手く絡み合った物語で、とっても想像が広がって行く話でした。
ロマンス小説とかの枠とは関係なく、こういう話好きだわ~。

犯人については想像通りで、ローセットに化けてるんだろうなあというのはすぐに分かります。しかし、もう一人の方にはしてやられてしまいました。やられたあ、と唸ってしまいました。小説ならではですね。
犯人との最後の対決の時の飄々としたロスがこれまた素敵です。ピンチなんだけどね。
隠れてる犯人の名前を呼ぶ所とか……ああ、知ってたのかって、やっぱり三人の中で観察眼と分析力はぴか一なんだよね。一番食えないヒーローだしなあと納得。ダントツ私好みでした。

三作品とも面白く読めました。
ナポレオン戦争初期の勉強にもなったし、久々に楽しかった。


薔薇色の恋が私を (ライムブックス)

薔薇色の恋が私を (ライムブックス)

  • 作者: コニー ブロックウェイ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2006/05
  • メディア: 文庫



愛が薔薇色に輝けば (ライムブックス)

愛が薔薇色に輝けば (ライムブックス)

  • 作者: コニー ブロックウェイ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2006/09
  • メディア: 文庫



薔薇の誓いと愛を胸に (ライムブックス)

薔薇の誓いと愛を胸に (ライムブックス)

  • 作者: コニー ブロックウェイ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2007/02
  • メディア: 文庫



nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。