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「孤城に秘めた情熱」「初恋と追憶の肖像画」 エリザベス・ホイト [ライムブックス]

「孤城に秘めた情熱」 四人の兵士の伝説シリーズ 3

一作目からちらっと登場しているリスター公爵の愛人ヘレンがヒロインです。とはいうものの娼婦だった訳ではなく、17歳で公爵に囲われてからずっと公爵一筋です。
家政婦としてアリスター・マンローの朽ちかけた古城へ送られます。
前作終盤で、メリサンドがヘレンの逃亡先にマンローを選んだ時に、彼の事情を説明しているんだとばっかり思っていましたが、実は何の説明もなかったらしい。
いや、メリサンド、そりゃ駄目だろうよーー;
そして予想通りの出会い。そりゃそうだよねえ。
公爵の愛人として働いたことのないヘレンが家政婦として何とかアリスターの役に立とうと悪戦苦闘する所とか、初めて彼を見て悲鳴をあげて怖がったアビゲイルがアリスターに心を開いていく所など、徐々に彼の人生に三人が入りこんでいく様子が丁寧に描かれていて、あったかい気持ちになります。
でもね、アリスターですが、学者のくせに草食系男子ではなかったのが予想外で、残念な所でした。
自分の雇っている相手だというのに、葛藤も何もなく、愛人にしちゃう気満々ですぐに手を出してるのが嫌だ。
拷問によってできた、正視できないぐらいの傷跡で覆われた顔半分と、抉り出されて空洞になった片目のアリスターが身体だけではなく心にも深い傷を負っているのは誰にでも分かります。わかるから、ヘレンの心の傷にも気づいてほしかった所です。
ヘレンが自由になった後の対応も最低ですしね。
愛人との子供が二人もいるヒロインって私好みじゃないと思っていましたが、全編を通してのヘレンの前向きな頑張りは読んでて気持ちが良かったです。
だから、ヘレンのことを愛人としか思ってなくて、結婚を一度も考えなかったアリスターが傲慢で残酷だと思いました。
何処かで一度は考えてほしかった。そこに葛藤してほしかった。その事実がなかったのが残念です。


前二作は元軍人だったせいか、敵も暴力的だし解決も力技でしたが、今作は学者ということで、暴力的なシーンはありません。
国王を利用しての頭脳戦の勝利です。
更には次作では思わずニヤリとしてしまいました。
また、敵がスピナーズ・フォールズとは全く関係なかったし、アリスターの救済がメインのストーリーだったので、犯人探しは中座といった感じです。
元々彼は軍人ではないですしね。

寓話の「正直者」の物語は、王女と結婚して富を手に入れるのではなく、正直者が最後に王国を手に入れて王様になってから、王女にプロポーズするのが良かった。



「初恋と追憶の肖像画」 四人の兵士の伝説シリーズ 4

生きながらに焼き殺されたレノー・セント・オーバンがまさかのヒーローです。
って、前三作でみんなの目の前で焼き殺されてたじゃん! どういうトリックで助かるのよ?
と思ったら、みんな顔は分からなくて服でレノーと判断したとのこと。んじゃ、その時死んだのは誰なのよ? 裏切り者の謎に関係あるの?
など、こんな設定、もう、しょっぱなからワクワクが止まらないですよね。
前作から繋がるミステリーによって、出だしの盛り上がりは最高潮です。
そう……クライマックスは叔母のタント・クリスタルに出会うまでだった。つまり序盤ですーー;
後は申し訳ないけどエピローグって感じで、犯人はまあいいとしても、レノーとの関係が全くないし、無理やり物語を回収した感が否めない。
レノーは四作通じての謎と設定がその存在感を大きくしているのでとってもいい感じなのですが、最大の問題はヒロインです。
魅力はないし、ロマンスが面白くない。このヒロイン、必要ないよね?
彼女がいなくてもレノーの物語として、最終巻として話が成り立つし、その部分が面白かった。
レノーの六年間の話を聞く時に、せめて、メリサンドのように彼に寄り添える性格なら良かったのに、ただ聞いて同情するだけなんだよね。
自分のことでいっぱいいっぱいなのは分かるけど、あまりにもベアトリスが自分のことばっかりで、辟易してしまった。
表面的には心優しく芯の強いレディとなってますが、何か違うんだよなあ。なんだろ、この残念感。
ジェイミーの存在も中途半端で、うーん……何故かキャラが空回りしている感が強い。
ベアトリスがいなければ、ジェイミーとレノーの出会いなんて、議会での彼の発言へのとても良い動機に持っていけそうなんだけど……何が嫌って、ベアトリスがレノーを自分のことしか考えない自己中と憤慨する所とか、私のため?って思って感動したりするのが、それこそ彼女の自己中心的な考えが前面に出てて嫌だった。
作者が、ロマンスと犯人捜しを上手く絡ませることが出来なくて、ロマンス部分を何とか体裁をいい形にしてしまったってことなのかな。
たぶんベアトリスのレジー叔父さんが犯人ミスリードの位置にいたためなんだろうけど、色々と釈然としないものが残る話にもなっています。
「スピナーズ・フォールズの虐殺」の物語の最終巻としては、上手く纏まっていますし、納得の結末で良いんですけど……犯人も一作目からレギュラーですし、四作通して、ちゃんと自分の役割を演じてますしね。最後の方は小物感がものすごく出てたけど、次期首相がほぼ決定しているって時点で、かなりの権力者だと思う。つるんでるのがリスター公爵だし。
レノーが一人だけ連れ去られ、誰かが身代わりで焼き殺されたくだりの説明も必然性の説明がなかったよね?
それとも、その時焼き殺されたのが実はトマス・マドックだった? でも、そんな描写なかったよね?
何で、レノーだけが一人別で連れ去られたかの説明もないし、四人とも犯人の兄への陰謀にただ巻き込まれちゃっただけだから、レノーの犯人との繋がりがとっても薄くて、最後の対決がどうにも必然性を感じないんだよね。
各作品のサム・ハートリー×ソーントン、ジャスパー×マシュー・ホーン、アリスター・マンロー×リスター公爵(今作分も含めて)の対決はちゃんと必然性があり、結末としては納得いくものだっただけに、レノー×ハッセルソープの対決だけが何となくピンとこなかった。
いや、ハッセルソープの議会での面目を潰したって部分は良いんですけど、彼のレノーへの恨みも行動も論理的ではなくて、そこが小物感たっぷりで四作の締めとしては納得いかない所なのかもしれない。、
設定やキャラクターの配置など、とてもいい感じなのに、どうしてこんなに腑に落ちないんでしょうね。
終盤は一気に話が進む分、説明的なのに説明不足だったりしてます。
それとやっぱり、ヒロインがもっとうまく立ち回ってくれていれば、かなり面白い作品になっていた気がします。
ああー! ものすごく、もったいない!
こんなおいしいキャラなのに、レノー。

サム、ジャスパー、アリスター、レノーの揃う終盤はとっても豪華。
ずっと読んできた読者にはとっても嬉しい場面でした。

寓話「ロングソード」はそのまんまレノーの境遇ですね。物語的には他の話ほど捻りが利いてない気がしますが、直接レノーのストーリーを象徴していました。


孤城に秘めた情熱 (ライムブックス)

孤城に秘めた情熱 (ライムブックス)

  • 作者: エリザベス・ホイト
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2013/02/08
  • メディア: 文庫



初恋と追憶の肖像画 (ライムブックス)

初恋と追憶の肖像画 (ライムブックス)

  • 作者: エリザベス ホイト
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2013/12/10
  • メディア: 文庫



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