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「偽りの別れに愛のあがないを」(堕ちた天使シリーズ) サラ・マクリーン [ラズベリーブックス]

「偽りの別れに愛のあがないを」(堕ちた天使シリーズ3) サラ・マクリーン

大きな身体の無敵のボクサー、テンプルがヒーローです。4人の中で一番女性に優しかったテンプルです。優しくて大きい人なんだよね。(包容力だけではなく、全てが大きい人っていう感じ)全編通してそれが分かります。
対するヒロインは十二年前、父親の婚約者で、テンプルが殺したとされているマーラ。まあ、生きていた訳ですけどね。

これも一作目と同じで再会の物語で、お互い20歳と16歳の時に出会い、おそらく一目惚れに近い状態だったのが、状況が恋に落ちることを許さず事件が起きてしまった。それ故に、二人は互いに深く結びつくことになってしまった。一度、それも短い時間にしか会ったことのない相手に。
こういう設定大好きです。
テンプルの暗く重い過去のことは前作から十分わかっていたんだけども、ヒロインの過去が重いのはサラ・マクリーンの作品では初めてです。
そして、色々な意味で過去のヒロイン達の中で一番強いヒロインでもあります。いみじくもチェイスが彼女を評したように。肉体的にも精神的にも強いし人を頼らない。それはいわゆる女性的な頑固さやしなやかさではなくて、人間の生きる本能というか、生命力の強さなのです。
過去の過ちの償いというのは、人が科せられる責任の中で一番難しく、困難なものだと思う。
起こってしまったことは変えられず、それを過ちと認め、謝罪することの難しさ。そこにワザとではなかったという思いがあれは余計に謝罪も償いも難しいと思うのです。
償いの意味で善行を行うことはあっても、本当の意味で謝罪して償える人は物語の中でも珍しいからです。
基本的に過ちは元に戻せないものであり、そのものに対して購うなんてことはできないからです。
それを見事にやってのけたマーラは天晴で、一度も言い訳をしなかった所にも惚れます。
彼女はすべてにおいて一人で対処するし、助ける人もいない。また、それを期待することもない。
唯一そういう存在になれたかもしれない弟を切らねばならなかったマーラ。
テンプルが殺されかけた時の堕ちた天使の中のマーラの孤独が、十二年間(もしかすると母親が死んでからの十五年)の彼女の孤独なんだと思った。
こんな強い女性にメロメロにならなかったら嘘だよ、テンプル。
と、思ったんだけど、マーラの評価はあまり良くないらしい。
マーラが良くないと思われるのは、テンプルに正直になれなかった所? 強過ぎる所? 逃げちゃう所? なのかなあ。
私は、自分を自分で助けることのできるマーラがとても好ましいと思ったんだけど。ちゃんと人の声に耳を傾けられる所もあるしね。基本的に素直で芯の強い女性だから。
終盤にテンプルから逃げる所は、相手を神のように崇め、自分を卑下して傍にいられないと思う辺りが、ペネロペから逃げようと足掻いていたボーンに良く似た感じを受けました。
だから二人はそりが合わなかったのかしら。ボーンがマーラに殴られて青痣作ってる所はちょー楽しめた。

そして、ラスト。
チェイスに全部持ってかれた!!



↓超ネタばれです。

「スカートを撫でつけて……」の所! 思わず叫んでしまいました。 この作品、チェイスが案外冷たいなっと、思いながら読んでたんですよね。マーラに対しての敵愾心が強いし。 前二作はかなり手を回してヒロイン達の味方をしていたチェイス。でも、今作はほとんど手も口も出してないし、テンプルのことは気遣うんですけど、マーラを気遣う所がないんですよね。マーラは知り合いですらないからそれは理解できるんですが、それならペネロペもフィリッパも知り合いではなかったし、信用する筋合いはなかったじゃないか……と思ったのです。でも、二人に対しては始めっからずっと好意と信頼を持っていたチェイス。 それで、ヒロインに対するチェイスの態度にずっと違和感を持っていたんだけど、エピローグで全ての謎が明らかに! そして、今までの思わせぶりな部分が全部筋が通ることに気づきました。この作品の中だけでもいくつかある。レイトン公爵夫妻の仮面舞踏会に密かに参加してる所とか。 そりゃ、マーベル家の女性達は特別だよなあ。 ナンバーズから全部再読しなければ。 次作が気になって仕方ありません。今年の11月に発売されるって? 邦訳は来年秋ぐらいかしら。待ちきれません。 テンプルの捨て台詞から、ドノヴァン・ウェストがいつかスピンでヒーローになるのではないかと思ってたんだけど、これって、もしかして次作ヒーローなのでは? と思うラストでした。 次作でテンプルがウェストのセリフを言ってる所が頭に浮かんできはじめちゃった^^


偽りの別れに愛のあがないを (ラズベリーブックス)

偽りの別れに愛のあがないを (ラズベリーブックス)

  • 作者: サラ・マクリーン
  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2014/07/10
  • メディア: 文庫



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