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「悲しみに聖女の祈りを」「チャペルから消えた花嫁」「エメラルドは静かに燃えて」 キャリン・モンク [ランダムハウス]

「悲しみに聖女の祈りを」

面白かった。第一印象は暗い話だったけど、思った以上に楽しめた。
ヒーローのヘイドンが殺人で有罪になっていて、明日には絞首刑になるという絶体絶命の状態で話がスタートします。
有罪になっている殺人の原因になった事柄が、彼自身の抱える原罪になっていて、非常に重いものになっています。
自分の容疑を晴らすために大抵は親友とか親族とかが出てくるもんなのですが、ヘイドンってば、侯爵のくせに窮地に陥った時に頼るべき相手がいないという、孤独人間です。
友人がいないほど他人に無頓着だったヘイドンは、ヴィンセントの気持ちにも鈍感で、自分の痛みにいっぱいいっぱいです。
放蕩者で軽薄で浅はかで無責任な過去を恥じているし後悔もしているけれど、ヘイドンが自分がしてしまったことが、どういう意味を持っていたのか本当の意味で理解するのは最後で、ヒロインのジュヌヴィエーヴがヴィンセントを救っている所を見て初めて気付くのです。
そのヘイドンを助けるジュヌヴィエーヴも生活面でかなり崖っぷちの状況になっていて、あまり明るい要素がありません。
でも、子供達が話の救いになっていて、重苦しい展開なのに、何処か明るさを感じます。
とにかく、ヘイドンの過去の所業に嫌悪を感じなければとても面白く読める作品だと思います。
聖女タイプのヒロインは苦手だと思っていましたが、ジュヌヴィエーヴは実行力のある聖母タイプだったので、素敵なお母さんでした。



「チャペルから消えた花嫁」

ヘイドンが61歳……あれ? そんな年行ってたっけ? と思いましたが、前作の時、40歳なるかならないかってぐらいだったのね。結構肉体派だったし、もうちょっと若いイメージで読んでたわ^^;
と、出だしでそんなことに気を取られてしまいました。
前作で傷付いた一匹オオカミタイプの少年だったジャックがヒーロー。
もう少しアウトロー感が出てても良かったのかなあと思いつつ、変に真面目な常識人間になったジャックに物足りなさを感じてしまった。
成り行きで花嫁を結婚式から逃がしてしまい、そのまま行動を共にする序盤のストーリー展開はとても良かったです。
アメリアにちょっとイラッとしながらも、何気に優しいジャックに好感触。
しかし、どうしてロマンス小説のヒロインは離れないでと懇願されているのに平気で離れて行ってしまうんでしょうね。
いつもヒーローを置き去りにするヒロインの心情が理解できないんですよね。
心の奥から懇願されているヒロインに限って、出て行ってしまう気がする。現代で言うと、仕事と私どっちが大事なの!?って激怒しながら出て行くタイプのヒロインね。で、そういうヒロインって、家族とヒーローを秤にかけて、ひとまず家族を取るんだよね。きちんと話し合えば落とし所も見つかるだろうに、衝動的に出て行ってしまうのもこのタイプ。
まあ、アメリアは元々衝動的で浅はかな人間なので、まず、激怒して出て行くタイプではありますね。
自分のことばっかりで、(成長したように見えてもやっぱり自己中だった気がします)あまり好きなタイプのヒロインではなかったけど、ヒーローのジャックが自分自身を卑しみながら愛を求めてるタイプだったので、まあ、ヒロインはこんなタイプで仕方ないのかなって思います。「荒野の果てまでつれてって(キャシー・マクスウェル)」を思い出したわ^^;主人公も展開も似た傾向の話だった。
中途半端になっている実父のことはまあいいとして、船舶会社の問題は解決してほしかったと思いますが、まあ、長期的な視野に立っての解決策なので作品中は明るい展望という方向性が出ただけで十分なのかな?
ケント家全員大集合は良かったな。みんなに活躍の場があって、終盤の作戦もコメディタッチで、ほんわかしました。
前作よりも明るく読み易かったです。



「エメラルドは静かに燃えて」

序盤のシャーロットが中々カッコイイ。
そんな彼女に動揺してる一章のハリソンが私のど真ん中で、思わずニタニタしてしまいました^^;
もう、出だしが最高です!
よる年波に勝てず、身軽に動けなくなっている元怪盗の年齢にちょっとドキドキしながら読み進めてしまった。
あの1ページ目、どんだけ年寄りなんだ?と思いましたが、40歳ならあんなものだろうか……。
このシリーズのヒーローは年齢高いよね。
今回は登場人物の辻褄を合わせようとしたら、ハリソンの年齢を下げる訳に行かなかったのは分かる。敵の策略期間と恨みの原因を考えると、どうしてもこのぐらいに落ち着いたんだろうな。
さて、二人の出会いは良かったんだけど、その後の展開があまり好みではありませんでした。
父親への恐怖がトラウマになってるシャーロットは分かるんだけど、あまりにも浅はかで考えなしで酷いよね。
犯罪に対してマヒしすぎてるというか……脅迫されたから脅迫するって、どうなのよ、それ><
ハリソンが捕まってからの展開は良いんだけど、それまでのシャーロットの行動がどうにも受け付けなかったです。
ジュヌヴィエーヴに憧れて、彼女のようになりたいというのが根底にあり、穏やかで優しく芯の強い性格付けの割に好感の持てない性格なのは、弱さと強さを上手く表現できていなかったからなのではないかと思う。
実の父が出てきてからの性格が破綻していたのは、まあ、トラウマということで良いんだけども……でも受け入れ難かったの。
終盤の犯人との対決、実父との対決、十六年前のダーク・シャドウの正体など、きれいに終わっていて読後感はまあまあ良いんですが、ハリソンの病気について、せめてもう少し救いをあげてほしかった気がします。結局頭痛はそのまんまなんだよね? まあ、アヘンチンキとお酒が原因のような気もするけどね。

そういえば、ジュヌヴィエーヴは結局子供を産まなかったような感じがする。そういうことを言及する表現はなかったし……。レドモンド侯爵夫妻にとっては実子も養子も関係ないんだろうけど。
さて、この後サイモンがヒーローの「Every Whispered Word」が刊行されています。でも、邦訳は無理でしょね。何で倒産しちゃったかな、ランダムハウスーー;

悲しみに聖女の祈りを (ランダムハウス講談社文庫 モ 1-1)

悲しみに聖女の祈りを (ランダムハウス講談社文庫 モ 1-1)

  • 作者: キャリン モンク
  • 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
  • 発売日: 2009/08/10
  • メディア: 文庫



チャペルから消えた花嫁 (ランダムハウス講談社文庫)

チャペルから消えた花嫁 (ランダムハウス講談社文庫)

  • 作者: キャリン モンク
  • 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
  • 発売日: 2009/10/10
  • メディア: 文庫



エメラルドは静かに燃えて (ランダムハウス講談社文庫)

エメラルドは静かに燃えて (ランダムハウス講談社文庫)

  • 作者: キャリン モンク
  • 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
  • 発売日: 2010/01/08
  • メディア: 文庫



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